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すぐに、ゴルボーン伯爵は化け物の顔になった、なんて噂がめぐって――。
僕は左側反面を見たくなくて、ただ顔を洗ってケネスが用意した寝間着に着替える。
広い寝台に身を横たえ、枕元のランプはつけたまま、目を閉じる。
この怪我を負ってから、毎晩のように悪夢を見る。暗闇に引きずり込まれ、顔を焼かれる。肉の焼ける臭い。目を抉られる痛み。死の恐怖。
それ以前の記憶をなくしているのに、それだけは体に刷り込まれたのように消えない。
僕はその夜も悪夢にうなされて、明け方近くまで眠れなかった。
目を覚ました時、すでに陽は高かった。
僕が起きた気配を感じ取ったケネスが、朝食を運んでくる。
「ルイーズや、子供……アンは?」
「朝食は各自でお召し上がりになる習慣と伺っております」
「そう……」
僕はケネスが差し出すオートミールの粥にさじを入れて、黙々と食べる。バター付きパンと、熱い紅茶。ボイルした腸詰と、焼きトマト。スクランブルエッグ。
朝食を終えた僕は、なんとなく、書斎の机の周囲を家探ししてみる。
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