冷たい妻

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 僕は思わず、左目を覆う包帯に手で触れる。  この傷はかなり醜い。若い女性が見たら、百年の恋も冷めそうな感じ。  ――もともと嫌われていたら、もしかしたら決定打に――  その様子を見た妻が言う。 「……父からの手紙で、傷のことも知りました。ずいぶん、気にしていらっしゃると」 「その……醜いからね……若い女性が見るには、少し……」  この傷を見た母なる人が半狂乱になる程度には、醜い。 「それはずっと包帯が必要ですの? お薬も?」  妻が背後のケネスに向けて尋ね、ケネスが答える。 「お薬は必要に応じて。痛みなどがなければ必要ないと聞いております。包帯は、やはりその、外見を気になさって……」 「そうですの。痛みや不具合があるのなら、お医者様をお呼びしなければ。ただ、こちらは田舎で、専門の眼科医もおりませんので」 「目は、もうどうにもならないんだ!」  僕が思わず声を荒げると、妻がハッと居住まいを正す。 「その……目はもう、医者に見せても見えることはない……」
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