294人が本棚に入れています
本棚に追加
僕は思わず、左目を覆う包帯に手で触れる。
この傷はかなり醜い。若い女性が見たら、百年の恋も冷めそうな感じ。
――もともと嫌われていたら、もしかしたら決定打に――
その様子を見た妻が言う。
「……父からの手紙で、傷のことも知りました。ずいぶん、気にしていらっしゃると」
「その……醜いからね……若い女性が見るには、少し……」
この傷を見た母なる人が半狂乱になる程度には、醜い。
「それはずっと包帯が必要ですの? お薬も?」
妻が背後のケネスに向けて尋ね、ケネスが答える。
「お薬は必要に応じて。痛みなどがなければ必要ないと聞いております。包帯は、やはりその、外見を気になさって……」
「そうですの。痛みや不具合があるのなら、お医者様をお呼びしなければ。ただ、こちらは田舎で、専門の眼科医もおりませんので」
「目は、もうどうにもならないんだ!」
僕が思わず声を荒げると、妻がハッと居住まいを正す。
「その……目はもう、医者に見せても見えることはない……」
最初のコメントを投稿しよう!