帰還

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帰還

 その美しい(やしき)は、ちょうど盛りの薔薇に囲まれていた。  ゴルボーン・ハウス。そこが僕の家だと言われても、全く何も思い出さず、ピンと来るものはない。首をひねっていると、背後に控えるケネス・ウイルソンが小声で言う。 「こちらは五年前からお住まいでした。年の半分以上は王都屋敷(タウン・ハウス)でお過ごしとのことですから――」  ケネスは、戦争中に僕の従卒を務め、今は従僕(フットマン)として、そのまま雇っている。 「……お前はこちらには?」 「私は戦争の際に新たに雇用されましたので。こちらは初めてです」 「……そうだったな」  僕は、何度目になるかわからない問答を、ケネスと繰り返してしまったと気づき、気まずく黙り込んだ。 「……お前がいてくれてよかったよ。そうじゃなきゃ、何もわからない」 「旦那様……」  扉が開き、かっちりした正装を一分の隙もなく着こなした初老の男が入ってきて、僕の前で深々と頭を下げた。 「奥様とお嬢様はもうすぐにも、こちらにいらっしゃいます。まずはお茶を――」 「えっと――」 「執事のジョン・サンダースでございます」
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