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抽斗には手紙が何通か。王都の友人からの、簡単な時候のあいさつ程度。名前を見ても誰だか思い出せない。日記のようなものでもないかと思ったが、そんな殊勝なタイプでもなかったらしい。
と、ドアがノックされて、誰何すれば、執事のサンダースが書類の束を抱えていた。
「旦那様、こちら、これまでは奥様が代わりに決済なさっていた書類ですが、旦那様が戻られた以上、一度目を通していただくべきだろうと、奥様から――」
「ああ……僕でわかることなら」
サンダースは僕の前にいくつか書類を並べる。
ルイーズと結婚し、バークリー公爵の嫡男扱いになったことで、僕はゴルボーン伯爵としての権利を獲得し、それに付随する財産なども譲渡されたらしい。
バークリー公爵家は建国以来続く名家だが、途中、王子が婿に来たり、王女が降嫁したりして、王族との関係は深い。その嫡男であるゴルボーン伯爵の財産や領地も、単なる儀礼称号では済まない程度にはある。
――これを今まで、女性のルイーズが決済していたとしたら大変だったろう。
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