帰還

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「お怪我の方については伺っております。……こちらは何分、田舎でございますから、医師と申しましても……我が家の主治医、ニコルソン先生に念のために一度、診察をお願いしておかれては」 「……ああ、医者ね。王都の医者には特に問題ないとは言われているが……」  問題ないというか、これ以上は治らない。左目は眼球がなくなっているから、一生見えないのだ。――右目を酷使すると右目も見えなくなるから、気をつけろとは言われている。 「わかった。ありがとう……」  僕はそう言うと、グレイグ夫人の淹れてくれたお茶を飲もうと手を伸ばし――目測を誤って熱いお茶の中に指を突っ込んでしまう。 「あちっ……」    僕がハンカチを出そうともたもたしているところに、ちょうどふわりと空気が流れて、人が入ってきた気配を感じた。  僕が顔を上げると、初夏らしい薄水色のドレスを着た若い女と、目が合った。流行の、フリルがふんだんに使われたドレスだが、色味を抑えているので派手過ぎるということはない。プラチナブロンドの髪をきっちりと結って、ドレスと同じ水色のリボンでとめている。  
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