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光に透けて輝くブロンドに、陶器のような白い肌、アメジストの瞳。ビスクドールのように整った顔立ちに華奢で折れそうな体つき。でも、腰は細くくびれて胸にはそれなりのボリュームがある。零れ落ちんばかりの大きな瞳と小さな唇。少し童顔で、でも物腰は落ちついて体つきは大人っぽい。――僕の好みドンピシャリじゃないか。
服装と態度からして、彼女はこの家の女主人、つまり僕の妻なのだ。
さすが僕。――記憶はなくなっても、選ぶ女の好みは変わらないらしい。僕の沈んでいた気分が一気に上がってくる。
が、一方の妻はやけに冷静だ。戦争から三年ぶりに戻ってきた夫を前して、普通は抱き着くとか涙ぐむとかするんじゃないか? いや、その記憶はどこから? すごく昔に見た劇とか小説とか、そんな記憶?
彼女の表情は凍り付き、アメジスト色の瞳からは、何の懐かしみも感じられなかった。
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