美人妻

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 僕自身、顔の半分が無くなるまでは、容姿端麗だと言われていたらしい。実際、右側だけならそれなりの顔だと思う。そこにいる妻は表情が硬い以外は申し分のない美貌だ。  僕と妻とを掛け合わせて、この平凡な娘が生まれたとしたら、少し残念だ。  そんなことを思ってしまい、僕は慌てて咳払いをする。娘は僕の顔をじっと見て、包帯に覆われた左半分に首を傾げる。 「おとーたま、おけが?」 「そう、お父様は戦争で大きな怪我をなさったの。でもだいぶよくなったのですって」  妻が横から言う。 「あなたはまだ、生まれたばかりだったから、お父様のことは覚えていないわね。……もうすぐ三歳になりますの」 「う……」  僕は何と答えていいかわからない。……娘がいるとは聞いていたが、記憶もないし何の感慨もわかない。 「その……名前は……」 「アン、ですわ。洗礼名はテレーズ。わたくしどもはアンか、アニーと呼んでおりますけれど」 「そ、そう……アン」    アンが手を伸ばしてくるのを、乳母らしい女がぎょっと止めようとしたが、僕はその場の流れでアンを抱きとった。
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