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「ところでジャイロ、て、なに?」
「そこかよ、ハチ、」
たしかに、梅ちゃん、説明してくれなかった
月子さんも口を尖らしている。
「理系クラスならわかっとけよ、て、ことだろ? あれだよ、河原先生の道具箱に入ってる、コマ、」
て、アサは双眼鏡で遠くを確認しながら説明してくれる。
道具箱ってのは、古典の河原先生がプリントやら資料やらを入れて授業に持ってくる木箱だ。その箱の隅に、いつも手のひら大の、凝った形をしたブリキのおもちゃが入っていた。
「あれ、コマなの?」
なにかもっと凝った…いつだか地学室で見た渾天儀みたいだったけど、
「そう、コマ。紐を引っ掛けてまわすと遠心力で、台を傾けても平行を保てる」
「へぇ、」
「てか、標本棚のとなりの見本棚に、本物のでかいやつがあるぜ?」
「見たことない」
「見てないだけだろ」
「そうか、」
「そうだ」
「智恵子さんが、光太郎さんの、ジャイロ…ステキ、」
月子さんが理解した、みたいにゆうのに、ぼくにはよくわからない。
「奥様が、コマ、」
「そう、コマ」
「コマ、」
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