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月子さんが黙ってるのを見て、ちょっと、ほんのちょっと安心する。期待なんかできるわけないのに。
「なに月ちゃんを泣かせてんだよ」
天がふざけて口をだしてくるけど、
「おぉ、わりわり、数えます、数えます、数えますよぉ」
となりの雪にすぐ足を踏まれている。
「月ちゃんをいじるんじゃないわよ」
しまいには月子さん親衛隊冴子さんにアサが頭を叩かれて、
「はい、はいはい、カウントカウント!」
高村光太郎についての論争は答えなく打ち切りとなった。
桜の色を映したお堀の水鳥たちはもう北へ戻りはじめ、残るのは、
「キンクロ、オス一九一、メス七〇」
「ハシビロ、オス二、メス一」
「ヒドリ、オス三、メス二、」
「ヒドリ、メスがいない」
いつもつがいで浮かんでいるヒドリの、数が合わない。
「二月も合わなかっただろ」
「よく覚えてる」
「ハチ、そんときも同じこといってた」
「そうかな」
「そうだ。で?」
サクサク次の観察ポイントへでてゆく一行の少し後ろをついてゆきながらアサは肩をぶつけてきた。
「安心した?」
「…アサ…、」
「バレバレだ」
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