春 Gyroscopic

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 「ケンカしたらお腹すいた」  憤懣やる方ない月子さんに、  「では姫さま、ケーキを食べて帰りませう」  うやうやしく先輩たちが提案して、ぼくたちは野鳥観察を終えた足で千鳥ヶ淵のカフェに向かった。  アンティークな店内の二階角席。窓からお堀が見下ろせる、そこがぼくたちの指定席だ。  「すごい、桜、すごいね!」  窓の下に咲き誇る満開の桜と、  「うわ、すごい桜の味!」  春限定桜クリームパフェに、女子たちの機嫌はころりと上々だ。  「雪のそれ、いいな。ちょっと、」  「いやっ」  「ゆきちゃ〜ん、あたっ、」  「意地汚い、」  天が雪のアフォガードにのっかっている桜サブレに伸ばした手を叩かれている。  「オレのカラメルパフェ、一口、あげるから。はい、あ〜ん」  ご機嫌をとる天の差しだすスプーンに、従順に口を開ける雪を眺めながら、  天なら、雪はオレのジャイロだった、とか平気でゆうんだろうな…  ここにいた。現代版智恵子抄。ふたりとも男子だけど、ふたりとも男子だけど。  「うまいな、」  「あ、ちょっと!」
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