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植物はおろか生き物全般に興味がないアサにとってはさぞ苦痛だろうと思うのだけど、「気分転換」とかいって、この怪しい散歩をアサはどうやら気に入っていた。
うまくすれば、ひやかしかにやってくるOBになにかしら奢ってもらえる、て、こともあるかららしい。
「そもそも、なんで、生き物が好きなわけじゃないのに生物部に入ったの?」
班分けで、なにも興味がないからぼくと同じでいい、と、いいはじめたアサに訊いてみたけど、
「ハチが生物部だっていうからだよ」
て、むちゃくちゃだ。
仲良しこよしだったのか。そうじゃない。アサとぼくはほかのクラスメイト同様、入部前日、つまり入学式で「はじめまして」だったわけだから。
入学式、気づいたら同中出身の顔で彼はぼくのとなりにいて、帰りには一緒に、靖国神社の桜祭りでソフトクリームを食べていた。
それからはいつも一緒で、部活見学にもついてきた挙句、部活にまでくっついてきたのだった。
「入学試験の日に見かけた。五階の、標本棚前で」て、アサはゆうけど、申し訳ないことにぼくはアサをまったく覚えていなかった。
「一目惚れした。ハチに」
そんなぼくにアサはいつもそう、口の片端だけつり上げて悪そうに笑ってみせた。
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