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「きょうの、国語の、」
そこでアサはカウンターの手をとめずに、一人分あけて並ぶ月子さんを一瞥した。
「むりなんかじゃないし、」
月子さんがそれに気づいて、やっぱりカウンターの手をとめないまま、睨み返してくる。
あら、あらあら、
真ん丸の、リカちゃん人形みたいなかわいらしい目で睨まれてもなんの迫力もないですよ? ぷっくり膨らませた頬がマシュマロみたいで、思わず触れたくなる…て、いやいや、
「ダサっ」
「ダサい、て、なによ!」
「なになに、またケンカした?」
月子さんのとなりで記録をつけている冴子さんが苦笑している。ケンカをはじめたふたりを挟んでそれはぼくに向けられたもので、
「あぁ、かな?」
日常茶飯事のそれにぼくも肩をすくめた。
「あれはフィクションだろ」
「フィクションじゃないよ! 光太郎の正直な気持ちだよ!」
あぁ…
大概悪いのはアサの方で、月子さんのやることなすことに難癖をつけてケンカをふっかけてる。女子とうまくはなせない小学生男子みたいだ。ついでに月子さんも、男子にむきになる小学生女子みたいだ。かわいいけど。
アサ、もしかして月子さんのこと、好きなわけ?
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