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職場に行くと管理職という立場ゆえにそれなりにストレスも感じる。土日は必ず昼に寝落ちしている。明らかにオーバーワークだ。毎月四十時間以上の残業を行い――通勤の往復に二時間半。この、大変さを、あいつは分かっているのか?
会社に到着するとざっと百通以上のメールに目を通し、火急のものから順に返信していく。この作業があるがためにおれは七時半に出社をしている。勿論、勤務時間外にて、無給だ。電車も空いているからそのほうが都合がいい。この、おれの努力をあいつは――。
『離婚してください』
コントローラーを握るおれにそう伝えてくる妻はなんだか別人のように思えた。こいつ……こんな老けてたっけか? がたいがよかったっけ? 結婚前は、可憐で華奢な女の子……じゃなかったっけ?
『あなたと一緒にいるのはもう限界です。わたしがこの部屋を出て行きます。
住むところはもう、決めました。この沿線ではありません。知らせる必要があるなら住所はお知らせします。もう、契約も済ませました。啓介はわたしが連れていきます』
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