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……っておいおい。『南実子!! なに勝手に決めてんだよ!! 離婚とかありえねえだろっ!! だいたい、啓介もいるのにっ!!』
手を振り上げようとしたそのとき、妻は……目から涙を流した。音もなく、ごく自然に。
『あなたのそういうところが……いやなんです。もう……顔も見たくありません。
来週には出て行きます。離婚届、机のうえに置いておきますので』
『おい。待て。待て……っ』おれが止めるのも聞かず。あいつは、おれとは別の寝室へとさっさと入っていった。
まったく。なにを考えているのやら。あいつの考えがちっとも読めない。
案件の管理、人員の情報整理なんかに忙殺されあっという間に昼休みを迎える。面倒なことに、セキュリティの関係で、このフロアでは食事を取れず、社食で食うか、外に、食事をしに行かなければならない。いつもなら、おひとり様を満喫するか、たまに、後輩を誘う程度なのだが……。
「……若松さん。ご一緒していいですか?」
エレベーターで、若松さんという社員と一緒だったので彼女を誘った。理由は――。
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