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「え? 奥さん共働き――だよね。お子さんいくつだっけ?」
若松さんはおれよりも年上の先輩で、シンママ。昨晩見た妻の姿よりも若く見えるのは何故だろう。
「五歳……、です。保育園には妻が自転車で送迎しているんで……ってか。同じ町に住むんなら、別に、別れる必要なんかなくないじゃないですか? あいつの言っている意味が、分かんないっす」
若松さん相手には砕けた口調になるおれである。すると、若松さんは、箸でアジフライを摘まんだ手を止め、じ、……とおれを見つめ、
「なんですか」
「いや。……夫サイドってつくづく、妻の孤独を分かってないんだなぁって。うちの元ダンナも似たようなこと言っていたわよ? 家事は丸投げ。ワンオペ育児させといて、おれの稼いだ金で飯食ってるんだろう的な。……話し合っても無駄だと絶望したわ」
ふぅ、とアジフライを皿に戻すと若松さんは息を吐き、
「……住むところまで決めてるって相当だよね。……ちなみに岩岡くん。保育園の送り迎えとかちゃんと行ってる? 保育園に足を運んだ回数って何回くらい?」
コロナ禍もあるのでイベントは軒並み中止だ。すこし考えておれは答えた。「三回くらい……ですかね……あいつのほうが、出社時間遅くて退社時間も断然早いんで。残業しても時々、十九時まで程度ですよ。保育園全然間に合いますし」
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