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かれのまわりで起こること
高校を卒業するまで、社会は目覚ましく変わっていった。日本は未曽有の好景気のなかで、それを加速させた。
あいにく別の高校に通ったかれとだが、近所なのでよく会った。
「おとといの台風で都市がひとつ壊滅したそうだよ」
「そうすればさらに大きな都市がそこにできるんだろうね」
「いや、災害にあった人たちは気の毒だろ」
「それはきっとぼくたちのように、明日もまた同じ日が来ると根拠のない確信で過ごしている人にとっては悲劇だろう。要は見方だ。明日、宇宙が一瞬にしてはじけてしまったら、それを悲劇だと感じることはないからね」
なに言ってんだ、こいつ。災害がなんで宇宙がはじけるになるんだ?
だがその悲劇はあいかわらず起きた。もう起きすぎて、誰もかれも不感症になっていったあの日、それは起きた。
冬の日の正午、オーストラリアに、ある国の宇宙施設が落ちた。それは宇宙の軍事施設と呼べるものらしく、詳細はわからなかったがオーストラリアとのすべての連絡が途絶した。
かれはただその日、ずっと空を眺めていたのを、わたしは記憶している。
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