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はじまり
それは交差点内で唐突に起きた。
最初はどこにでも起きるような車同士の小さな接触事故だったはずだ。コツン、といった具合。ところがそこに後続のトラックが突っ込んでしまった。それからは連鎖するように後から後から車が突っ込みだし、さらに後ろから猛スピードで走って来た車はついにそれらを乗り上げ、さらにそれを乗り越えようとするように次の車が飛び込んで、瞬く間に車の山が出来上がり、それは一斉に火を噴いた。
たいして広くもない交差点は、あっという間に火の海となった。三つ目の爆発音で正気にかえったわたしは、すぐにかれのところに行き、かれの肩を強く叩いた。
「あぶないよ!こんなとこにいちゃ!」
「平気だよ」
いまも忘れない。かれはあのとき、そう言ったのだ。それがすべての、始まりだった。
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