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必然の偶然
かれは、平気だと言った。
どうして平気なのかわからなかった。だっていままさに大量の車が燃え、爆発しているんだ。樹脂の燃える煙も、ガソリンの匂いも、炎も破片も、みんなこっちに襲ってくるような気がしたのに。
「でもでも、ここにいたらヤバいよ!」
「まあそうだ。二分後くらいには、ここも火にのまれるね」
なんて悠長なやつなんだと思った。ただ、またあの胡乱な目をしながら、その炎の爆発を見続けているかれに、恐怖、いや、畏怖を感じた。
「と、とにかく逃げようよ!」
かれは何も言わず、ただそれにしたがってくれた。あの胡乱げな目だけは、やめていた。いや、たった一言、こう言った。
「必然なんだ、偶然はね」
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