ふしぎな形の家

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ふしぎな形の家

小学四年生に、かれの言葉の意味は理解できなかった。だから黙ってかれの後ろを歩いた。 「ぼくんちはそこ」 かれはぶっきらぼうにそう言って指をさした。それはいつも通る道にあった、不思議な形の家だった。 「面白い形の家だね、きみんちって」 「よく言われるって言いたいけど、あいにくぼくにはそう言ってくれる知り合いがいないから、面白い形なのかはよくわからない。でもお父さんが建築家なので、そういうデザインの家ってことはわかるんだ」 へえ、お父さん建築家なんだ。それにしても知り合いって、なんだか変な言葉づかいだ。 「お母さんは?」 唐突におかしなことを聞いてしまったと思った。ただの同級生にしか過ぎないのに、家庭のことまで聞いていいのかと後悔した。ただ、かれは表情一つ変えることなく、すんなりそれに答えてくれた。 「科学者。いまつくばってところの研究所で陽子と中性子の研究をしている。その研究所はお父さんが作ったんだ」 「すっごいね!超エリートじゃん!」 かれはそのとき、べつにどうってことないよというような意味の言葉を言ったと思う。なぜその記憶だけがおぼろげなのかは、猛スピードで次々と通り過ぎる消防車や救急車、そしてパトカーに驚いてしまっていたからだ。
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