ウサギ小屋

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ウサギ小屋

学校中でそう噂されるのは時間の問題だった。 夏休みに学校の校舎が全焼したのは序の口で、唯一残った体育館に飛行機が突っ込み、そして学校のプールは地震でぱっかりと割れて使えなくなった。おかげで楽しみだった夏休みのプール教室もあきらめなければならなかった。 「なあ、あいつのせいじゃね?」 「そうだよな。きまって登校日だったからな」 「でもそれってクラスみんなが来てたし」 「だから、あいつが当番のところだけ無事なのはなぜかってことだよ」 かれの当番。夏休み中はうちのクラスが、学校で飼育しているウサギの管理をしなければならない。かれはそのウサギ小屋の掃除と餌やりの当番だった。 学校の施設で唯一無事だったのはそのウサギ小屋だけだったのだ。冷静に考えれば滑稽な話だが、当時の小学生にまともなロジックなどあるわけがない。当然かれは危険人物として認定された。
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