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ともだち
そうなると当然かれと友だちになるようなやつはいなくなる。だから教室ではいつも孤立し、そしてひとりぽっちになっていった。
「なんでぼくに話しかけてくるんだ?」
かれはいつもそう聞いた。学校じゃあまりしゃべらなかったけど、学校の帰り道ではよく一緒に歩いた。いや、ついて行った。そしてときどき後ろから声をかけた。だって気になるから。
「きみはいつも一人でいるけど、さびしくはないの?」
おかしなことを聞くやつだ、という顔をした。いや単にそう思っただけだけど、きっとそういう顔だった。
「べつに。個は衆になると変質するが、ぼくはそれを望んではいないからね」
「意味わかんないよ。きみが何を言いたいのかさっぱり」
「すでにきみとぼくがふたりいるだけでぼくは変質した。それはきみの影響を受けたぼくと、ぼくの影響を受けたきみがいるってことで証明できる」
「あー、なんか難しくてわかんないよ」
「それがともだちってことじゃないかな」
「ともだち、かあ」
ともだちと言われ、そのときなぜだかうすら寒い気がして、そそくさと家に帰った。それでもそういう関係は中学を卒業するまで続いた。
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