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危険人物
中学のときは、かれはおとなしく過ごしたかといえば、はた目にはそう見えても、かれの行く先々で事件や事故は起きた。
それは小さいものから大きなことまで、枚挙するいとまがないほど頻繁に起こった。そのすべてに彼が関与しているとうわさされた。もちろん真実かどうかはわからない程度のうわさ、だったけど。
「どうしてきみのまわりばかりでそういうことが起こるのかな」
中学の帰り道でも、後ろからそう聞いた。そしていつでも、まるっきり関心がないように彼は答えた。
「まえに言ったろ?必然な偶然なんだって」
「いやそれ意味わかんないよ」
「この世に起こる偶然って、すべてもうすでに決まっていることなんだ。だから必然」
「そんなばかな。だったらそれは偶然じゃないじゃないか」
そうさ。偶然っていうのはたまたま起こる予期しないことだからだ。わかってたら偶然とは言わない。
かれはまた、おかしなことを言う、という顔をあのときわたしにした。
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