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Phase 03 正義
「アタシは正義の味方になるのが夢なんだ。例えば戦隊ヒーローのピンク色とか黄色とか。戦隊ヒーローはか弱い女の子でもヒーローになれるって教えてくれたんだ。」
西田仁美はヒーローを夢見る変わった少女だった。普通の女の子ならならプリキュアのような魔法少女に憧れるべきなんだろうけれども、彼女が夢見ていたのはピンク色の戦隊ヒーローだったのだ。
そして、大学時代には特撮を研究するサークルに所属するほどの特撮オタクだった。もちろん、今でも日曜の朝になると戦隊ヒーローは欠かさず見ている。
そんな仁美が警察官を目指すきっかけになったのは当時勤務していた銀行で発生した銀行強盗だった。中学校の時に柔道部に所属していた仁美は強盗を背負投げ一本でノックアウト。後日兵庫県警と銀行から表彰されることになった。
「銀行強盗を思いっきり背負投げするなんて、君は度胸が据わっているな。」
「いいえ、アタシはアタシの正義を貫いただけのことです。悪い人は懲らしめる。それがアタシのやるべきことだから。」
「そうだ、警察官になってみないか?銀行員は安定した仕事だけれども、警察官は公務員だ。生涯の就職は保証できる。」
こうして、西田仁美は銀行員を辞め25歳の時に警察学校に入学した。柔道をやっていたこともあり女性警官として並外れた身体能力を持っていた仁美は僅か半年のスピードで警察学校を卒業した。古谷善太郎ですら1年かかっているので驚異のスピードである。
そして、配属が決まったのは兵庫県警の中でも屈指の治安の悪さを誇る生田署の交番だった。
「勤務地は家から通える範囲でお願いしたのに、よりによって生田署・・・。」
酔っ払い、喧嘩、痴漢、迷子、金銭トラブル・・・。生田署に通報される案件は古谷善太郎が配属されていた神戸北署と比べると桁外れに多かった。あまりの案件の多さに吐血することも多かった。
そんな中、仁美に対して転機が訪れた。
それは半グレ集団のおとり捜査への協力だったのだ。
「このおとり捜査が成功したら、君は交番勤務から本部への勤務になる。つまり、君はお巡りさんから刑事へとなるんだ。」
古谷善太郎の言葉に、仁美は俄然やる気が湧いた。
というのも、仁美も友人が半グレ集団による裏バイトで辛い思いをしたのを聞いていた。高収入という甘い言葉に惑わされ、違法風俗店で働かせられる羽目になったのだ。正義の味方を自称している仁美としては友人のためにも半グレ集団を壊滅させるというのはかつて無い夢だった。もしもおとり捜査が上手く行けば自分は表彰される。そして夢だった刑事への昇進も決まる。
これは、一人の婦警の大勝負なのだ。
早速、仁美は潜入捜査を行う半グレ集団の調査を独自に開始した。
半グレ集団の名前は「タランチュラ」というらしく、地元の暴走族が大人になって半グレ集団に変貌したという経歴を持っていた。
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