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「僕もあの集団を追っていかなければならない。仮令リーダー格の人間が逮捕されたところで、それが組織の壊滅に繋がるとは思えない。タランチュラはまさしく蜘蛛の巣のように絡み合って成り立っているんだ。」
「そうですね。私も生田署の人間として重点的に見張っていきたいと思います。」
結局、アタシは刑事へと昇進できなかった。けれども、「タランチュラを壊滅に追い込みたい」という正義は揺るぎないものだ。
その後も、生田署に寄せられるタランチュラ関連のトラブルは絶えない。
特に最近増えているのは違法薬物に関するトラブルだ。
そして、その違法薬物に関するトラブルで再び古谷君とバディを組むことになったのだが、それはまた別の話なのだ。
「盛山定輔が強制性交の罪で逮捕された。」
「そうか。しかし違法風俗店の運営ではなく強制性交で逮捕されるとは思わなかったな。」
「なんでも捜査に協力した婦警が犯されたとか。」
「しかし盛山定輔が逮捕されたところでタランチュラのリーダー格はすぐに入れ替わるだろう。半グレ集団のメンバーの入れ替わりは激しい。今後も注意していきたい。」
「だるま落としのようにメンバーを逮捕していけば、そのうち組織は自然と壊滅しそうな気がするんですけどね。」
「それはどうだろうか。タランチュラの根は深いぞ。」
「僕はこれ以上古谷君を巻き込みたくない。彼は正義感が強いが時に暴走してしまう。今回の違法風俗店の摘発の件も西田君がいなければ失敗していた。最悪の場合、古谷君と西田君への懲戒処分も辞さない構えだった。しかしタランチュラを壊滅に追い込めるのは彼しかいないんだ。」
「古谷善太郎か・・・。婦女暴行事件の目撃者。そして悲劇の子。俺も彼を応援したい。」
そう言いながら、大泉警部と稲川長介は高級料亭で談笑していたのだった。
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