342 街中の追跡

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342 街中の追跡

 「た、隊長!あれを追うのは……!」  「クソっ!なんて身体能力だ……!」  護衛隊長も、また他の護衛たちも、なす術なく、黒髪の男を見上げた。  「隊長!」  「大丈夫ですか!?」  別の護衛隊数人が駆けつけた。皆、手にはボウガンが持たれている。  「おぉ!もう来てくれたのか!ありがたい……!」  予想以上の早さの増援。  護衛隊長にとって、嬉しい誤算だった。  「大通りで警戒していた時に、隊の者に、すれ違いました!」  「なるほど!そういうことか!」  「それで、ジンは……!?」  「あそこだ……!」  護衛隊長が上を指差す。  「!!」  ――タッ!タッ!タッ……!  黒髪の男が、向かい合う建物の壁を蹴ってジグザグに上ってゆくのが見える。  ――カチャッ。  すぐに護衛数人がボウガンを構える。  「屋上までいかれると厄介だぞ!」  「相手が建物から建物に飛び移る瞬間を狙え!」  「いまだ!打て!!」  ――ビュッ!  護衛たちがボウガンを放った。  相手の動きを先読みしての射撃。  ちょうど、黒髪の男が建物の壁と壁の間の空中に身を晒したところへ、ボウガンの矢がその身を貫きにかかる。  「……」  黒髪の男が、身体をひねる。同時に、腰につけていたダガーを逆手持ちに抜いた。  ――カキキン!  身体を横向きに回転させながら、黒髪の男はダガーでボウガンの矢をはじいた。  「くっ……!」  「防がれたか……!」  ――タッ!  空中で体制をたて直し、黒髪の男は再び壁を蹴る。  「くっ!もう一度!」  「ダメだ!屋上に……!」  「諦めるな!」  護衛隊長が振り返り駆け出す。他の護衛たちも続いた。  「た、隊長、このままだと見失うのでは……!」  「この建物郡は四方のうちの一つが大通りに面している!それに残りの三方もそこそこ広い通りに囲まれている!」  走りながら、隊長は部下に命じた。  「つまり飛び移ることができる建物は限られている!いま駆けつけている護衛たちに、建物郡の周りを囲むように指示を出すんだ!」  「なるほど!了解です!」  護衛数人が、それぞれの通りへと散った。  「ボウガン隊は俺と一緒に迂回して、ジンの進路方向と思われる向かいの通りに回り込むぞ!」  「はっ!」  大通りの混雑を避け、比較的人通りの少ない通りを選択して、急いで迂回。  そこは住宅エリアで、先の場所に比べ、建物が低く、普通の人間でもよじ登れるような高さになっている。  「あっ、別動隊の隊長じゃないすか」  血の確認でこのエリアを徘徊している、数人の護衛がいた。  「どうしたんすか?やけに急いで」  「黒髪の男が、こちらに来なかったか?」  「いえ、こちらには」  「よし、先回りできたようだな」  護衛隊長は、住宅の石垣を利用して、屋上へとよじ上った。  「隊長!ジンは!?」  「えっ!?ジン!?」  ボウガン隊の言葉を聞き、数人の護衛が驚愕していた。  「……いない。どこかで降りたようだな」  住宅の屋上から、護衛隊長が、ボウガン隊、そして、数人の護衛に言った。  「このエリアにいるのは間違いない。このまま、徐々に追い詰めるぞ……!」
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