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兄弟
「俺が医者になるためにって、随分お金を使わせた……。なのに、何もできなかった。逆に治療を受ける側になって、もっとお金を使わせた。望みもないのに。これからだってなあんにも、できないんだよなぁ……」
雲の切れ間から銀色の月明りが差し込む。浮かび上がる、隣の布団で窓に視線を向ける兄さんのやつれた白い顔。乾いた唇から紡ぎ出される少しかすれた低めの声はすうっと俺の胸に沁みこんでいく。
そんなことない。思わず出かかったその言葉は喉元に出る直前で中途半端に詰まった。
「だって、家に帰ったのだって。表向きは退院でも、もう……無理だからだろう」
「それ、は……」
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