燃ゆる瞳

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「私を『しょうかん』に売るか、あなたの『コレクション』にするか……あなたに選ばせてあげる」 「ほう……この俺を挑発するなんてお前が初めてだ。後悔するぞ」 「ミシェル(・・・・)はもう死んだの。脅しても無駄よ」  その声に力がこもった瞬間、セフィアスには本当にシャーロットが生まれ変わったようにみえた。同時に無謀ともいえるほどの必死さで彼女を取り戻そうとしていた理由を、ようやく自覚した。 (一度でも逃がす(・・・)べきではなかったな……) 「どっち? セフィアス」 「今は入港の方法を考えるのが先決だ」 「話をそらすのがお上手ね」 「そう煽るな。パパ(・・)の元につき返されたくなかったらな」 「……っ」 「どうした? 脅しても無駄なんじゃなかったのか?」 「……あなたは卑怯よ」 「何とでも言え。世の中はお前が考えているほど甘くない」  シャーロットを冷たくあしらい、セフィアスは船室を出た。背中に刺すような視線を感じながら。 (あれが数日前に身投げをしたあの貧弱な娘か? 死んだ魚のような目をした『ミシェル』と同一人物だというのか……?)  セフィアスは甲板に上がり、しばし目蓋を閉じて瞑想した。それでも生命の輝きを取り戻した真紅の瞳は、目に焼きついて離れない。 (屋敷に閉じ込めておけば、ああはならなかったはず……いいや、あれが本来の彼女なのか……? とにかく早く答えを出さなければ、また卑怯だと罵られる羽目になる……)  夜風に当たりながら、セフィアスは深く考え込んでいた。その背中を見つめるナキシムの視線にすら気づかないほど。 (そもそも俺のものをどうしようと勝手だというのに、何故こんなに心が乱れる……?) 「……()……?」  初めて自分以外の者に外された仮面に無意識のうちに触れながら、セフィアスはしだいに落ち着かない気分になった。シャーロットに暴かれたのは、素顔だけではないような気がした。
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