月夜の戯れ

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「何なんだ……本当に……」  魔力で眠らせたミシェルを見下ろし、セフィアスは呆然とつぶやいた。女性に好意しか寄せられたことのないセフィアスにとって、ミシェルの反応はすべてにおいて不可解きわまりなかった。  あんなに気持ちよさそうに愛撫されていたくせに、いきなり『触らないで』って何だ? しかも泣きだすとは……。 『大嫌い』と言われたのを思い出し、無意識のうちに眉尻を下げながら、セフィアスはミシェルの寝顔を改めて見つめた。  本当に……いいや、どう表現すればいいのかわからないほど美しい。もう彼女以外を妻にすることなど考えられない。残念ながらさっそく嫌われたようだがな……。  ソファに移動したセフィアスは、大きなため息をもらしながらグラスに酒を注いだ。  確かに初対面にしては強引だったかもしれないが、これから妻になる女への接し方としては完璧だったはずだ。……あぁなるほど、俺の顔が美しすぎて緊張したのか。これからは仮面をつけたまま接するとしよう……。  あっという間に立ち直ったセフィアスは、満足げな笑みを浮かべ酒をあおった。手のひらにのせた戦利品──ミシェルが身につけていたため、期せずして手に入った本来の標的──"ベリルライト"を眺めながら。  魔界でも希少なこの魔石が、人間界で見つかるなんて奇跡に等しい。さらに盗みに失敗したにもかかわらず、悪魔であるこの俺の手に転がり込むとは……。 「これは単なる偶然か……?」  目に見えぬ誰かに問いかけるようにつぶやき、セフィアスは小さな赤い石がはめこまれた首飾りを握りしめた。
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