それぞれの道

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 五月一日。今日から私は私の道を生きていく。保育園時代から仲の良かった美佳とは偶然同じ学校で同じクラスだけど友人として隣に並ぶことはもうないだろう。私は中学に入って早々に人気者になった美佳を同じ教室の中から遠巻きに見ながらその眩しさには敵わないと思った。  二人でいたあの頃に存在していた世界はもう幻になってしまった。それを少しだけ寂しく思うけれど、私たちはもう十代後半だ。子どもならではの世界とはお別れで、これからは誰かや何かに依存することなく現実を生きていく。  けど、完全に現実だけを見て生きるのは辛いものがある。現実=厳しさだけでも成立する世界。それを憂鬱に思ってあの頃とはまた少し違う逃避をする。逃避先は私の場合は本や絵画の中。美佳の場合は流行のファッションやドラマの世界について友人たちと話すこと。  全く方向が違うけれど、根の部分は同じだ。その「根」の部分は幼少期に作り上げられたものだと思う。
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