それぞれの道

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   私たちはあの頃「二人だけの世界」を持っていた。何が共通点だったのか未だに言葉にできないけど、強いて言うなら「同じ音」を持っていて他の同級生たちとは離れたところで秘密の世界を作って遊んでいた。  変わり者だった二人が作る閉じた世界は不健康さが垣間見えていて、その黒さも含めて楽しんでいたことを覚えている。  積み木のお城に好んで住んでいたようなものでいつ崩れてもおかしくなかったけど、崩れるのではなく自然消滅した。 「ずっと友だちでいよう」という約束も一緒に消えたようなものだった。    あの頃のことは一時の夢としてもう封印する。  開くなら薄く。いまよりもっと大人になったとき、つまり完全に過去になったときに少しだけ。  開かなくても構わないけどいつかは、などと考えていると美佳たちの笑い声が聞こえてきた。    楽しそうな雰囲気は教室内全体を明るくしているようで頼もしい。そして少しだけ羨ましい。  けど、全員が明るくいる必要はなくて光と影の両方があってバランスが取れるという考えもある。私は私、人それぞれで構わなくて無理に合わせることもない。最初に決めた通り、このまま自分らしくいることにする。    ただ、あまり距離を取り過ぎても良いことにはならないとは思う。小学五年生のとき、クラスの女子ははっきりとグループに別れていてお互いにいがみ合っていた。  苛めこそなかったもののどうにも居心地が悪くて、私は休憩時間は廊下に出て隣の隣のクラスにいる美佳と過ごしていた。集団に加わる気のない者同士、学校内でも二人だけの世界を目立たないように作っていた。    他の子たちの輪から外れて話していたのは主に未来のことだった。少し先のことから自分たちがいなくなった後の世界まで。現在から遠くなれば遠くなるほど空想的な内容で、真面目に考えるのではなく楽しく浅い想像を広げていた。  
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