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山伏のような和装を着た、髪の長い霊媒師だった。切れ長の鋭い目許が印象的で、人間離れした神々しさがあった。怜央の頭を優しく撫でてくれた、神秘的な霊媒師。
俺の……初恋の人!
ゾゾッと体が震えた。まさかまた会えるなんて!
「そうだよ。半年前に会ったことも、昔除霊してやったことも忘れやがって」
龍牙が拗ねたように唇を尖らせる。
「す、すみません!」
「まあいいよ。昔除霊したのは14年くらい前だ。あの頃の俺はちょうど山での修行を終えたばかりだったからな。今とは髪型も、雰囲気も違っただろ?」
「全っ然違います! 同じ人間とは思えなかったです。神様みたいだった」
14年前の龍牙も眉目秀麗だったが、瞳に時折、黄金色の虹彩が浮かんでいたような気がする。爪も長く尖っており、金色だった。腰まで長く伸びた髪は、白に近い白金色。
霊媒師らしく見せるためのコスプレかなと思ったけれど、もしかしたら本物の神様か、はたまた山に住む鬼なのかもと思った。
そんな、思わずひれ伏しそうになるほど神々しいオーラを放っていた霊媒師。でも言動は親しみやすく、祖母以外には理解してもらえない悪霊が視えるという事実を、疑いもせず信じてくれた。言葉が土佐弁だったので、わからない言葉は祖母が通訳をしてくれた。
怜央より霊が視えて、祓える。怜央は彼に憧れ、尊敬し、そして小さな恋心を抱いた。
龍牙がククッと笑う。
「神様か。大げさだなぁ」
「だって、仕方ないですよ。あんな神秘的な人、見たことなかったし」
「ま、歌舞伎役者みたいな格好だったからな」
「格好だけじゃなくて、なんて言うか、オーラがすごかったです」
初めて会ったときは瞬間的に怖いと感じた。それはきのう、龍牙と対面したときに感じた怖さと同じだ。やはり同一人物なのだ。
「あの格好は天狗モードなんだよ。今は人間」
「て、天狗?」
ゆうべのギャグの続きか? 戸惑っていると、龍牙が立ち上がって休憩所の入り口に向かい、障子を閉めて戻ってきた。
「除霊してるところを人に見られたくない。集中力が削がれると失敗するからな」
そして怜央の背後で膝立ちになる。
「さて、さっさと除霊するぞ。その前に約束しろ。もう下手な人助けはしないと」
「下手なって……。わかりましたよ。もうしません」
「よし、いい子だ」
よしよしと頭を撫でられ「子ども扱いしないでください」とむくれた。
「怜央が言いつけを守らなかったからだろ?」
「まあ、そうですけどね。どうせ俺はまだまだガキですよ」
「ひねくれてやがる。いいからまずは浴衣を脱げ。肌に直接触れるぞ」
「はい」
怜央は浴衣を脱いで上半身を露わにした。あまり鍛えていないので逞しくはないが、細過ぎるわけでもない背中に、龍牙の視線を感じる。
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