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彼はニコニコと明るく微笑んでいる。おそらく、怜央を楽しませるために今度こそギャグを言ったのだろう。怜央はぶはっと吹き出した。
「おもしろいなぁ! 龍牙さんって結構ギャグを言いますよね」
「ギャグじゃないよ。天狗も、怜央を好きなのも全部本当。半年前に号泣する怜央を見て、かわいいと思ったんだ。なんとかもう一度会いたいと思ってた。また会えて、すごく嬉しかった。一緒に飲んで話をして、益々好きになったよ。怜央は優しくていいやつだ」
甘い眼差しが本気っぽくて逆に怖い。
焦った怜央は彼から少し離れ、ガクガクと震える手で徳利を持った。手酌でお猪口に酒を注ごうとしたが、震えてうまくできない。
「ま、またまたぁ。だったらなんで、今朝は落ちついてたんですか? 俺の、あ、あそこを触ったのに、全然興奮してなかったじゃないですか。普通は、好きな相手に触ったら興奮するもんでしょ?」
「そうだな」
徳利を持つ手に彼の手が重なり、そっと徳利から離された。そしてぐいっと体を引き寄せられ、強く抱きしめられる。
龍牙が耳元で熱く囁いた。
「興奮してたさ。あのまま押し倒そうかと思ったよ。でも体目当てだと思われたら心外だからな。必死に抑えてやり過ごした」
セクシーな低音ボイスに怜央は「ひっ」と肩をすくめる。
「今夜呼び出したのは、絶対に口説き落とそうと思ったからだ。もう一度言う。俺と結婚を前提につき合ってくれ」
「う、嘘でしょ……?」
体が打ち震えた。心臓が早鐘を打つ。信じられない、そんなバカなと打ち消すけれど、龍牙の口調に嘘は感じない。
「嘘でも冗談でもない。俺は本気だ」
「そ、そんな……な、なんで俺? 俺、男だし、取り柄もないし」
「そのままの怜央が好きだよ。キスしてもいい?」
瞳孔が開き、口が魚のようにパクパク開いた。
何がどうしてこうなったんだ? これは夢か?
泡を吹いて卒倒しそうだ。完全に理解の域を超えている。
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