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「ヒーローっぽいし、龍牙さんってかっこいい名前っすね」  怜央が素直な感想を口にすると、龍牙が「そうか? ありがとな」と言って笑顔でパチンとウインクをした。  うおっ、アイドルのファンサかよ!  漫画みたいな愛嬌たっぷりのウインクに、怜央の心臓がドキッと跳ねる。  女性なら一発で胸がキュンとなるだろう。変にキザじゃないところもかっこいい。  でもアイドルというより、カリスマホストのほうがしっくりくるかもな、などと考えていると、龍牙が背後にある大きな冷蔵庫からよく冷えていそうなワイングラスを取り出し、怜央の前に置いた。  深い森を思わせる緑色のボトルから、澄んだ透明の液体がグラスに注がれる。怜央は龍牙のバーテンダーのような美しい所作に見とれた。袖まくりをして露わになった逞しい腕にも惚れ惚れしてしまう。  かっこいいな……。  グラスの中の酒がシュワッと泡立つ。  彼に目を奪われていた自分が恥ずかしくなり、怜央は焦って視線をグラスに移した。 「これって、シャンパンですか?」 「スパークリングの日本酒だ。ここは日本酒専門のバルだから、日本酒しか置いてないんだよ。で、これは土佐の地酒。地元の米と水で仕込んだ発泡酒だ」 「へえ、俺、スパークリングの日本酒って初めてかも」  普段は時々コンビニで安いアルコールを買って飲む程度、居酒屋ではもっぱらビールとレモンサワーばかり。こんな風に専門店で日本酒をじっくり味わったことなどない。スパークリングの日本酒なんて高そうだな、経費で落とせるか? と若干及び腰になる。 「ああ、ここでの飲食代はレストランの夕食代分だけでいいからな。気にせず飲んでくれ」  怜央の顔に不安が出ていたのだろう。さらりと不安を払拭する言葉をもらい「えっ、いいんですか」と尋ねたら「俺が強引に誘ったんだ。いいに決まってるだろ?」と笑顔で返された。  龍牙が自身のワイングラスにも酒を注ぎ、指先でステムを持って掲げる。 「よーし飲むぞ! 俺達の再会に、乾杯!」  グラスを合わせるとティンと軽快な音が鳴って、怜央の心も軽く弾んだ。さっきからずっと彼のペースに引っ張られているけれど、それがなんだか心地いい。 「じゃあ、遠慮なくいただきます」  少しだけ酒を口に含むと、キンと冷えた日本酒が口中で爽やかに弾けた。透き通った、ハーブのような香りが鼻に抜ける。
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