あなたの夢は僕(私)の夢

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 優しい嘘なら許されますか  僕は神に問いかけた。ここはニューヨーク。ふらりと立ち寄った教会で祈りを捧げた。  僕には夢があって、それは努力の他に才能が必要だった。僕は努力を惜しまなかったけど才能だけはどうにもならなかった。  十年頑張って、やっと夢が叶いそうだった。僕が描いた絵を高く評価して、スポンサーになりたいと名乗り出たのは海外の投資家だった。活動拠点をこちらにできるなら資金援助をすると言った。  僕は迷っていた、彼女に一緒に来てくれと言いたかった。でも彼女は仕事が上手くいって昇進したばかりだった。仕事が楽しい、やりがいがある。あなたの夢をかなえるまでは私が家計を支えるから、と本当に世話を焼いてくれた。食事も作ってくれたし睡眠不足になりがちな僕の生活をサポートしてくれた。  彼女と一緒にいたかった。でも、もう解放してあげるべきなんじゃないか。彼女の人生を食いつぶしている自覚はあった、時間も金も自由も。そして僕が画家として生きていくとなると、それはもっと顕著となる。それはもう恋人じゃない、ただの使用人だ。だから僕は……。 「スポンサーがつくんだ」 「僕はアメリカに行くよ」 「君にも来てほしい」 「向こうで結婚しよう」 「幸せな家庭を作ろう」  こう言えば、彼女が断るのはわかっていた。何故なら彼女は今仕事が大好きで、結婚も子供も望んでいなかった。日ごろからそう言っていた、だからこういえば。  僕を、見捨ててくれると思った。 「とっくに愛想尽きてるから一人で行って」  ああ、本当に言われた。わかってたはずなのに、ショックだった。心のどこかで「私も行く」と言ってくれると思っていたのかもしれない。本気で泣いた。  でも僕が仕組んだことなんだ。彼女は部下もついて、上司からの評価も高いらしい。ボーナスは軽く百万超えるとか……。僕がいなくても、彼女は生きていける人だ。  僕がいないところでも彼女は輝き、いつかもっと素敵な男性と出会って幸せになる。 君が幸せになる事、それが僕の夢だ。
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