From hell, with love

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エリザはわたしの言葉にふふっと息をもらし、 「初めて来た方は皆さん、そうおっしゃいます」 「何か理由があるのですか」 「ええ、勿論。 博士ほど賢い方ならもうお気づきでしょう」 エリザは振り返って、まだ此方が名乗ってもいない肩書きで呼ぶ。 見透かされている。わたしは息を呑んだ。 外側からは分からない迷路のような複雑な内部構造。それは建設中に何回かの設計変更があったとか、そういった類のものではない。機密保持の観点から、初めてのものが確実に迷うように意図的に設計しているのだ。 答えは一つしかない。 「政府の特務諜報機関‥‥‥噂には聞いていましたが。 女王陛下はこのことをご存じなのですか」 「 送られてきた便箋の中にスコティッシュアゲートのブローチが入っていたはず。 あれは陛下のコレクションの一つよ」 エリザはそう言うと、片頬に抑制された冷ややかな笑みを浮かべる。 正確無比としか言いようがない唇の動き。無機質の美。 血の凍るような恐怖が音速を越える速さで指先から、こめかみ、背筋へと伝播する。 「逃げ場はありませんよ」 狼狽えるわたしを彼女はまっすぐに見据えて、刻むように言い放つ。 半ば伏せられた瞳。まるで氷の刃だ。威圧感こそないものの、そこから放たれる視線は場を凍り付かせる鋭さと冷たさを孕んでいる。
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