From hell, with love

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モンロウは瞑目すると、やれやれというようにかぶりを振る。 「ロンドン郊外は混沌を極めている。 現在も生活者の約三分の一が貧民だ」 失業者、浮浪者、乞食、病人、犯罪者、亡命外国人。 いずれも、<大不況(グレート・リセッション)>による産業構造の変化 と、欧州覇権争いおよび植民地獲得競争に伴う排外主義的イデオロギー蔓延の犠牲者だ。 今さらながら、ため息がもれる。世も末だ。 複雑な構造の裏側で散り散りに刻まれていく命たち。 届くことのない祈り。 事実なんてものは所詮、役立たずだ。 上品ぶった時代のなかで醸成された偽善的正義感からなる腐敗の前では何の効力も発揮しない。 人々が自分の無知を正しく認識することは稀だ。めったにない。 人間とはそういう生き物だ。 見たいものだけを見て、聞きたい情報だけを雑音の中から選び出す。 狭い世界の住人で、自分の信念だけが絶えず増幅される”(シェル)”の中でしか生きられないようになっている。 見えないし気づかないだけで、誰もが何かしらの悪に加担しているし、無意識に屍の上を歩いている。
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