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モンロウはエリザを一瞥すると、靄を払うように手を振りぬく。
するとそれが合図だったのか、手持ち無沙汰になった彼女はくるりと背を向け、再び定位置――――部屋の扉の前に黙って立つ。
「彼女は一体‥‥‥」
「生まれてからしばらくの間、複雑な環境で育ったせいなのか、やや失快楽症気味でね。 まあ、どうでもいいことだ。 少なくともわたしにとってはな」
モンロウはぶっきらぼうに言い捨てると、わたしを置いて立ち上がり、扉の方に向かって歩き出す。
「博士。 君は今日、自分がどれだけ無知であったかを改めて思い知ることになるだろう。 君がこれまで大学で熱心に学び、積み上げてきた精神分析に関する理論と方法論はすべて、時代遅れで役立たずの屑鉄以下だ」
意味がとれずに見上げるわたしに、
「エリザ。 聖櫃の鍵を」
と、モンロウは片端を持ち上げたままの唇で形をつくり、片目を瞑った。
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