From hell, with love

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わたしは笑った。全くの陰謀史観だ。 けれど、胸の裡に奇妙な引っ掛かりを覚える。 モンロウはそんなわたしの様子を見て、愉快そうに笑い、 「事実だよ、博士。 ドイツにある我々のセクションはかなり前から、内務省から直接指示を受け、彼らについての調査を極秘裏に進めていた。 組織のメンバーの殆どは優生学者だ。 潤沢な資金に支えられた彼らは、既存の骨相学の理論を応用させ、人間の脳の各部位ごとの機能を、あたかも地図に見立てたかのようにマッピングする技術を編み出した」 「ありえない。 高次な脳機能の解明にはまだ一世紀以上かかると言われているのに」 「博士。 残念ながら、それは無知の奴隷に甘んじる愚かな者たちの言い訳だ。構造を揺るがす大きな変化というものは絶えず起こっている。 ただ、我々にはそれが見えない。 まあ、無理もないが‥‥‥産業革命以降、構造はますます高度に複雑化した。現在の世の中というのは、知ろうとしない者が知らぬが仏の状態にとどまり、知ろうと努力する者が苦労をするようにできている」
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