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19世紀後半、世界に散在する列強資本主義諸国は合衆国・ドイツより始まった
<大不況>を機に世界市場支配と植民地獲得をめぐる厳しい競争に乗り出していた。
そんな中、イギリスは仁慈深き女王陛下の御世の下、圧倒的な軍事力・外交力を発揮。
幾つか血生臭い戦闘を繰り広げたものの勝利を重ね、屍の山を築き、インドをはじめとするあらゆる国々を自らを中心に据えた経済循環の枠組みの中に組み込んでいった。
結果、もたらされた平和と安定。各植民地・従属国からの富の流入は、産業革命を促進し、資本主義を発達させ、帝国を大いに繁栄させる資金源となった。
しかし、飽食とエゴを満たしたことで得た豊かさは人を堕落させる。
文化的に爛熟したことで行き詰まったヴィクトリア朝人の間には、道徳的腐敗と怠慢と無知がゆっくりと着実に浸透していった。
この時期、すでにイギリス国内では繁栄の裏側で生じたさまざまな社会のひずみが徐々に表面化してきていた。
資本家階級と労働者階級の分化に伴う貧富の格差拡大。
職も住居もない外国人移民(主に帝政ロシア政府によるユダヤ人大虐殺、ドイツの鉄血宰相によるシレジアの大粛清により祖国を追われた者たち)の増加。芽生える差別意識。
ロンドン郊外は一気に貧困とカオスの縮図と化した。
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