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大議会場。天使達は席につき、ラジエルが声を上げる。
「では、会議を再開致します。……大天使サマエル」
サマエルはゆっくりと立ち上がる。
「さて。私の見解を話すという事だったが、これに少しばかり訂正を。……正しくは『事実と私個人の推理を交えた見解』とさせてもらう。先程の休憩時間中に調査に行かせた部下が戻ってきた」
その言葉に天使達はざわつく。ラジエルは少し考えた後、サマエルの方を見て言った。
「先程の10分で、新たに分かった事があると」
「そうだ。そして、それは天界には良いニュースではないことも付け加えておく」
「分かりました。……静粛に!」
ラジエルの一声に静まり返る。サマエルは深く息を吐いて周りを見た。
「まず、ダエーワに属する魔王ドゥルジが命令されて天界を襲撃したという話。これは確定したと思っている。理由は簡単だ。ドゥルジやアンリ・マンユに限らず、彼らは誰かの命令で動く性格じゃない。あいつらは悪魔だ。規則ではなく自身がどうしたいか、で考える」
「確かに悪魔はそういった事を優先して動く。言い換えれば、感情的に動く事が多い」
「そうだ。実際そう言ったものを理由に堕天した者も多い。悪魔達は自分が納得出来るかどうか、満足するかどうかに重きを置いてる。だからこそ先日の魔王ドゥルジの行動はおかしい。……やつはアシャと殴り合うのを楽しんでいた。実際何度か目の前で見た事あったしな。だがドゥルジは何者かに命令されて天界を襲撃し、命令されて撤退した」
それを聞いたラジエルが難しい顔をした。
「……何者かに命令され撤退した、というのは、誰から聞いた事ですか?」
「御前試合の日、あの場にいたアシャと同じ場所にいた私の部下、死の天使No.3サバオトだ。あいつはあの後、何があったのかを私に詳細に報告した」
「成程……」
「疑うのか?」
睨むようにしてラジエルを見るサマエルに、ラジエルは首を横に振って答えた。
「いえ。彼自身の報告であるならば信憑性は高い。失礼しました」
「ならいい。次に。これは私も先程部下からの報告を受けて知った事だが、ベリアルの軍が指示に従って動いているらしい」
「何……?」
「私も先程同じ反応をした。だがあいつはどこの派閥にも所属してないフリーだ。そして戦いよりも姦淫を好む悪魔なのは、ここにいる者ならばよく知ってるだろう。奴は軍の長ではあるが、好きなようにやる事を好んでいる。昔ソドムとゴモラがああなったのは、ベリアル個人が人間達を唆したからというのは周知の事実だろう?」
「ふむ……」
ラジエルは目を細めて頷く。確かに、とでも言いたげな顔をしている。
「……では今回の件、誰が黒幕と捉えてますか?」
「……そうだな。天界に喧嘩を売る様な好戦的な動き、ダエーワさえ配下とでも言わんばかりの行動、ベリアルが大人しく言うことを聞くような者……」
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