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大会議場、別所。
「…………」
「……スプンタ、大丈夫?」
スプンタ・マンユの顔を覗き込むようにしながらウォフ・マナフが問いかけるが、返事は遅かった。
「……え? あ、ああ、大丈夫だよ」
「……やっぱり心配なんだろ、アンリ・マンユの事」
「まあ、ね。同時に生まれた……兄弟みたいなものだから」
「無理するなよな。キツかったら僕が代わりに仕事、アレとかコレとかやっとくからさ」
「問題ないよ。ありがとう」
そう言って笑うスプンタ・マンユだが、それが無理して作った笑顔であることは明白だった。
「今は立場が違くても、何か色々あるんだろ? それこそ二人だけの秘密とか、約束とか」
「…………」
スプンタ・マンユは遠い昔の事を思い出す。自ら悪の道を選び、自ら天界を出ていった彼の事を。
「……いや、そんな俗っぽいものは、私と彼の間には無いよ」
「……スプンタって嘘つく時、ちょっと鼻の穴広がるよね」
「えっ」
慌てて鼻を隠すスプンタ・マンユを、ウォフ・マナフは小さく笑った。
「嘘だよ、嘘」
「な……ウォフ……!」
慌てて叱るようにするスプンタ・マンユに、悪戯っぽく笑いながらウォフ・マナフは謝る。
「やーごめんごめん。……でも、少なくともアンリとの間に俗っぽいのがあるのは分かったよ」
「あ、あのなぁ……!」
「ごめんって。でもこうでもしないとスプンタ、ずっとそのまんまでしょ」
「そんな事は……」
「僕の前で嘘はつけないっていうの、忘れた?」
「それは……」
「……スプンタ、君に何かあったら僕は勿論だけど、他の皆も心配するよ。それに、そんなとこ見られたらアンリに笑われちゃうよ?」
「…………」
「……直接的な解決は出来ないけどさ、愚痴とか話聞くぐらいなら出来るから」
そう言うウォフ・マナフにスプンタ・マンユは安心した様な微笑をうかべた。
「……ああ、そうだ。……そうだな。ありがとう」
その言葉に、ウォフ・マナフは無邪気な笑顔で返した。
「スプンタ・マンユ様」
後ろからの声に振り向くと、そこに居たのはスプンタ・マンユの部下の一人だった。
「スラオシャ、何か分かったのかい」
「……それが、貴方にはかなり衝撃的な事かと」
スラオシャと呼ばれた天使は懐から報告書を取り出しながら告げる。
「それを読む前に一つ。……中を読んでも、飛び出していかないでください」
「スラオシャ、それって……」
ウォフ・マナフがその意味を聞く前に、スプンタ・マンユは報告書を開けた。そこに書いてあったのは、今スプンタ・マンユが信じたくない事だった。
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