第二話 天界大会議

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地獄、某所。 「ッ、つ……」 「ハハハ、さすが悪魔王様。ちょっとぐらいの怪我は簡単に治るな」 アンリ・マンユは目の前にいる男を睨みつける。 「……テメェ、あんなもん天界に送ってどうしようってんだ。オレがいたぶられてんのを見た程度じゃ、天界(向こう)は簡単には動かねぇぞ」 「ん? ああ、そうだろうな。知ってる」 「……何がしてぇんだ、お前は」 「何がしたいか? アッハハ、んなもん一つに決まってんだろうが」 男はアンリ・マンユに背中を向け両腕を広げた。 「……戦争。向こうの言い方すんなら、聖戦。天使も神も皆殺しのお祭り騒ぎだ」 くつくつと笑う男に溜め息をつきながらも、アンリ・マンユはその恐ろしい考えに悪寒が走った。 「……正気の沙汰じゃねえな」 「ああ、そうだろうな。でも、それがどうした? 俺は神には既に見放された。俺の正気や狂気を保証できるのは、俺だけだ」 「それを狂ってるって言ってんだよ」 「だから? それを言って俺にどうして欲しいんだ? 戦争起こすのは勝手だが、自分の片割れであるスプンタ・マンユだけでも助けてくれって?」 「……ンなこと言うわけねぇだろうが。あいつはあいつで何とかする」 「信じてるって? 良い話だねぇ、涙がちょちょ切れそうだよ」 そう言っているが、男が笑っているのは顔を見ずとも声音で分かっていた。 「安心しろよ。戦争が終わったあかつきには、お前がになるのさ」 「ッ……!!」 鎖に繋がれていなければ男に飛びついていただろう。鎖の音が牢屋内に響く。 「おっと、怖い怖い。……やっぱり、早い段階でアンタを捕えたのは正解だったな。戦力増強も出来たし、向こうにちょいとばかし揺さぶりをかけることも出来る」 そう言うと男はアンリ・マンユの髪を掴み自分を見させる。 「っ……。ッはは……まだまだ乳くせぇクソガキが、何か言ってら」 「……」 男は未だ強がって笑うアンリ・マンユの顔を殴る。 「ッ……はは、どうした、図星か?」 「……ああ、まあいいや。俺も俺でこれから色々準備しなきゃならねえしな」 そう言って男は牢屋を出ながら指を鳴らすと、急激に温度が下がり始める。 「氷獄の牢(コキュートス)の冷気……!? お前……!」 「……んじゃ、ごゆっくり」 「……ンの、クソガキが……!」 牢屋から、肌を割く痛みに呻く声が聞こえるのに時間はいらなかった。その声を聞き、男は満足そうな笑みを浮かべていた。
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