第三話 標(しるべ)

2/7
前へ
/87ページ
次へ
第七天、通路。そこに居たのは、天界にいるはずのない者達だった。 「これは……!?」 醜悪な、恐ろしい見た目の悪魔達。それらが、天使達を襲っていた。 「ぎゃああああ!!」 「や、やめ、うわあああ!」 「だ、誰か、助け」 その様子に、サマエルは舌打ちしながら曲刀とハルバードを出す。 「情けない……人間じゃないんだから、抵抗手段はあるだろうが!」 「何故悪魔が天界に!?」 「さあな! ただやる事は分かるだろう!」 「あ、ああ!」 同時に駆け出し、獲物を振るう。自身の身を守るより、まずはそれさえ覚束無い者達を優先していく。 「はっ!」 「ガ……!」 「ギガ……!」 「あ、アズラエル様……!」 「ここは私達に任せて、お前達は早く安全な所へ!」 「は、はい!」 「あ、ありがとうございます!」 礼を述べて駆け出していく天使達を見て、アズラエルは少し安心した様に微笑んだ。  脇からよそ見しているところを狙おうとした悪魔が居たが、はそちらも見ずに潰した。 「ギャ……!」 「この感じだと、他のところも出てるか……随分と大規模だな……それにしても」 アズラエルはちらりとサマエルの方を見る。 「ふっ」 「ガ……!」 「ア……」 苛烈。その一言に尽きる。サマエルは戦いでも仕事でも、使えるものは全て使う、とは聞いていたが。 「こういう状況で目の当たりにすると……なんというか、凄いな。彼女」 悪魔達はまだ逃げきれていない天使を狙ってくるが、それらを狙おうと一ヶ所に溜まった瞬間に叩き潰される。確かに敵を倒すならば効率はいいかもしれない。 だが。 「はっ!」 「ガ……」 一撃で地に伏した悪魔達を見下ろすサマエル。その目は冷たかった。 「ったく、数ばかり多い……おい、大丈夫か?」 サマエルが振り返ると、そこに居たのは。 「ひっ……!」 「……」 その天使達の目を見て、サマエルは悪魔達の方を見る。 「……早く行け。邪魔だ」 「っ……」 「早く!」 「は、はい……!」 天使達は怯えきった様子でその場を去っていく。 「……問題ない。よりは慣れたさ」 曲刀とハルバードを大鎌に変え多数の敵と相対するサマエル。 「アズラエル! 避難誘導頼んでもいいか? 敵は私がやる」 「だが……」 「私の方が現場慣れしてる。この程度なら問題は無い」 「……分かった。ただ無理だけはしないでくれよ」 「そっちこそな」 いつものようにぶっきらぼうに返すと、敵の群れの中へと躍り出た。 「今ちょっと機嫌が悪くてな……少しばかり、八つ当たりに付き合ってもらうぞ」
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加