19人が本棚に入れています
本棚に追加
休み時間は始まったばかり。
俺は教室を出て、時間潰しのために、行く当てもなく廊下をフラフラ歩いていた。
と、そこで後ろから呼び止められる。
「あれー、キョーちゃん、トイレ?
じゃあ、俺らと連れションしねえ?」
眉を寄せ、振り返ると、そこには「いつものメンツ」がニヤニヤとこちらを見つめていた。
「トイレはやべーよ、見つかるよ」という、瀬野の声を受け、俺は外へと連れ出された。
「キョーちゃん、今日こそ持ってきたか?
お、か、ね。
先週小遣いの日だったんだろ?」
薄暗い校舎裏へと連れてこられた俺。
グループのリーダー、村田は薄笑いを浮かべながら、俺に一歩ずつにじり寄る。
校舎の壁を背に、俺はギッと奴を睨みつけた。
その態度が、彼の癇に障ったらしい。
「お前のその態度が気にくわねーんだよ!
いじめられてる分際で、ガンつけやがって!!」
胸倉をつかまれる。が、俺は黙って、村田の大きな瞳を刺すように見つめた。
「そんなことでいいのかなー、キョーちゃん。
このままじゃ、お前も不登校になるぞ?」
村田の腰ぎんちゃくの瀬野は、彼の横でニヤニヤと笑みを浮かべている。
俺は村田も嫌いだが、瀬野のこともかなりウザい。
なぜかって、中途半端に頭が切れるから。
村田達いじめグループは皆、バカでケンカっぱやい。
こいつらだけなら、わざとぶたせて証拠を作り、先生か誰かに助けを求めることができた。
でも、ずるがしこい瀬野の助言のせいで、「いじめ」はいつも「仲間内のケンカ」に格下げされる。
結果、俺の前の席だった奴は、誰にも助けてもらえず不登校になった。
だから俺は、力を込めて、村田達を黙って睨む。
ここで俺が折れたら、やつらの思うつぼだ。
だから俺は、絶対折れない。
手を出すこともしない。
ただ、屈しない気持ちを示すために睨むのだ。
例え、どんなに怖くても。
最初のコメントを投稿しよう!