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「……なんだよ、これ」
俺の手は震えていた。と、同時にシオンが叫ぶ。
「ドラゴン討伐が、明日だって?噂では、もう少し先のはずだったのに」
「もしかして、私達にバレないように、予定を早めたのかな?」
モモが、文章の後半を指さす。確かにそうだ。
『シスターとシオンに伝えないように』なんてわざわざ書かれている。
「俺たちの妨害を恐れて、わざと偽の噂を流していたのか」
シオンはギリリと歯を食いしばる。
俺はこの手紙の意味を整理したくて、チビリューに尋ねた。
「チビリュー。これは、村人から盗んできたものなのか?」
「キュー!」とチビリューは首を縦に振る。
「それって、あの塔の見張りをしてる人たちなのか?」
チビリューはまたもや頷く。
シオンがそこに付け加えた。
「あそこは、村の男たちが交代で見張りをしてるんだ。
奴らがルカ様の世話もしてる。
これはおそらく、そいつら向けに書かれた伝言なんだろう。
見張り役の全員に、その意図が伝わるように」
「こ、この手紙って、いつのものなんだろう?明日って書いているけど……。
ねぇ、チビリューちゃん?ルカくんはまだ、塔にいるんだよね?」
「キュー、キュキューゥ!!!」
チビリューは激しく頷く。
その言葉に一瞬、安堵した。まだルカは、ドラゴン討伐には行っていないのだ。
俺はすぐさま、シオンの方に向き直る。
「シオン、今から塔へ行こう。行って、ドラゴン討伐に出る前に、ルカの本心を確認しよう!!」
「ちょっと待て。それは良くない。
確かに今のお前らは、以前より格段に強い。
が、多勢に無勢だ。日の明るいうちに行けば、村人たちはすぐに加勢をかき集め、俺たちに対抗してくる。
狙うなら、皆が寝静まった夜だ。
夜なら見張りの数も少ないし、すぐに味方も呼べない」
俺は湿った拳を握る。
シオンの言うことは最もだ。が、今こうしている間にも、ルカの出発準備は着々と進んでいるのだろう。
何もできない自分が歯がゆくて、俺は一層握る手に力を入れた。
そんな手に、瞬間、シオンが手を重ねてくる。
「……悔しい気持ちはわかる。が、今はシスターを待とう。
報告して、冷静になってから、作戦を練るべきだ」
俺はなんとか、頷いた。
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