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そしてとうとう、夜を迎えた。
その日は、こっちの時代に来た時と同じく、星々がまぶしいくらい光り輝いていた。
排気ガスを出すものがないから、空も綺麗なんだろう、なんて頭の片隅で思う。
シスターが塔まで見送ろうと言ってくれたけれど、俺たちは拒否した。
万が一、塔で俺たちが捕まった時に、見送りにきたシスターまで罪に問われたら可哀そうだからだ。
俺たちは、シスターが用意した武器を耐電布に包み、コソコソと夜の闇に紛れ、移動した。
「正門には門番がいるはずだ。裏側の柵を乗り越えていこう」
茂みから顔を出し、柵を指さすシオン。
「最初は俺が行く。俺が越えた後に、お前らが続け」と、俺たちの返事を待たずに、先に出て行ってしまった。
クールに見えるけれど、ルカのこととなると若干、周りが見えなくなるようだ。
シオンは、釣り針のようなものが付いた縄を持っていた。
それをカウボーイのようにブンブンと振ると、大人一人分くらいの高さのある、柵の上めがけて投げる。
引っ張って、釣り針がしっかりと柵に固定されたのを確かめてから、シオンは縄を手繰り寄せながら柵を上っていった。
ドサッと地面に着地する音がする。
それを聞いてから、俺はモモに目配せした後、茂みから出た。
俺は縄など持っていない。でも、このくらいの高さの柵、今の俺なら、乗り越えられる。
俺はゆっくり深呼吸をしてから、助走をつけた。
そして走り幅跳びの要領で、1、2と心の中数える。
3、を数えたと同時に、俺は勢いよく地面を蹴った。
身体は宙を舞い、柵の上へと舞い上がる。
が、気を緩めてはいけない。
俺は頭から落ちないように、空中で一回転をした後に両足で着地した。
「やっぱ、見事だな」
柵の向こう側でしゃがんでいたシオンが、ニッと笑みを浮かべる。
俺に続いてモモも、槍を使い、棒高跳びの要領で柵を飛び越えてきた。
「……ここからが本番だ。気を引き締めて行こう」
シオンの言葉に、俺もモモも静かにうなずく。
俺たちは、腰を低くかがめながら、未来タワー、ではなく『物見の塔』の正面玄関を目指した。
おそらく、そこには門番がいる。
初めての戦闘になるだろう。
俺の心臓は高鳴った。
取っ組み合いのケンカなら、村田達とやったことがある。
けれど、刃のある武器を持っての『本気の戦い』は初めてだ。
この刃は、『斬る』のではなく『感電させ、気絶させる』ことを目的として作られている。だから多分、血が出たりはしない。
それでもやっぱり、ドキドキする。
シオンやモモと何度も練習したが、それはあくまで「武器を持っている想定」での練習だった。
本物の武器で戦うのとは、やっぱり違う。
……って、何をいまさら考えているんだ。俺は。
ルカを助けるんだろう。そのために、ここまで来たんだろう?
俺は自分を奮い立たせながら、正面玄関へと急いだ。
しかし、だ。
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