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もう、後戻りはできない。
直感的に、そう思った。
「あと半分ってことだよな、行こう」
俺は自分を奮い立たせるためにもあえて声を張り、次の一歩を踏みしめた。
もうすぐ、そう、もうすぐルカに会える。
アイツは、こっちの時代に戻ってきたあの日から、一人でこんな高い所に閉じ込められていたんだ。
待ってろ、ルカ。俺が今すぐ、連れ出してやる。
こんな、天国に近いような高いところからは、引きずり降ろしてやる。
お前は、一人の人間だ。
同じ人間で、友達だ。
地面を駆け回って、ケラケラ笑っている方が、お前らしい。
ただ、ただ、上だけを見つめ階段を上る。
そして見つけたのは、59階の文字。
「もうすぐ着くぞ」
息切れしながら、シオンが告げる。
「最上階のドアは、三人で開けよう。何が待っているかわからない」
俺がそう言いながら、急く心を無視できないまま、シオンの隣に並ぶ。
そして、60階の床を踏む。
目の前にあるのは、またも防火扉。
少しモモを待ってから、俺たち三人は、「いっせーのーで」で扉を開いた。
と同時にすぐさま、武器を構える。
しかし。
「嘘だろ?」
思わずシオンがこぼす。
60階の展望フロア。
そこにも人は、いなかった。
「と、とにかくルカ様の部屋へ行こう。
真ん中の特別室にいるはずだ!」
俺たちは、絨毯の引かれたフカフカの床を蹴り、フロア真ん中にある特別室へと走った。
そこの扉は、コンサートホールや映画館の戸のような、両開きの大きなものだった。案の定、重く閉ざされている。
シオンが扉に耳を当てる。
「……だめだ。扉自体が分厚くて、全く中の様子が分からない」
「もう、ここまで来たら仕方ない。
いち、にの、さんで押し入ろう」
俺の提案に、二人が静かにうなずく。
「……じゃあ、いくぞ。
いち、にの」
俺は持っていた剣の柄をしっかり握る。そして。
「さん!!!!」
俺たちは一斉に扉を押す。
「ルカ!!!!!」
「ルカくん!!!!」
「ルカ様っ!!!!」
俺たちは、名を叫びながら押し入った。
だけど。
「えっ……」
思わず剣を下げる。
おかしいとは思っていた。今まで一人として、見張りの人間と出会わなかったことに。
だから不安はあった。だけど、それを押し殺して、1500段の階段を上ってきた。
なのに……。
「誰も、いない……?!」
俺は思わず、部屋のベッドに駆け寄る。
布団は乱れたまま。
その横には、俺たちの時代にいた時にルカが来ていたパーカーが脱ぎ捨てられている。
そう、ルカはいたのだ。確かにここに。
でも。
「一体どこに……?」
俺とモモが同時にシオンを見る。
シオンはその場に立ち尽くしながらも、ボソリとつぶやく。
「まさか、もうドラゴンの洞窟へ行ってしまった、のか……?」
「えっ!」
俺たちは声を揃える。
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