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「お前ら、ルカをなんだと思ってんだよ……」 口から震える声がこぼれ出る。 男たちが瞬間、こちらに振り返った。 俺は無意識の内に、その場で立ち上がっていた。 そして、胡坐をかきながら酒のようなものを酌み交わす男達を見下ろしていた。 「なんだ、突然!!」 「あ、このガキまさか、この前の昼、塔に現れた……」 男の一人が何かを言い切る前に、俺はそいつの胸倉を掴んでいた。 「おい、ルカはどこだ?!おい!!」 サポーターを付けているため、俺は片手でも、座っていた男を軽く持ち上げることができた。 その異常さに気がついたのか、男は真っ青になりながら首をブルブルと振る。 「ゆ、勇者様のことか? 勇者様ならもう、一人で洞窟に入ったよ」 「たった一人で行かせたのか?!」 茂みから出てきたシオンが、真っ赤な顔をしながら男ににじりよる。 「そ、そうだよ!!俺たちが行っても、歯が立たないのは明確だろう?!」 「だからって、危ないことは全部、ルカに丸投げかよ!!!」 すると、他の男が立ち上がる。 「あぁ、そうだとも!!何が悪い!!アイツは勇者なんだ。 人の役に立って当然だろう!!! それよりも、なんだお前ら!! シオン、なぜここが」 何かを言い終える前に、俺はギロリとそいつを睨む。 気迫に負けたのか、男は「ひっ」と言って口をつぐんだ。 その時「もうやめよう!!」とモモが俺と男の間に割って入る。 「ルカくんが、洞窟に入ったのは本当なんですよね? じゃあ、私達も行こう。 ルカくん一人を戦わせるわけにはいかない!!」 その言葉に、思わず我に返る。 そうだ。こんなことをしている場合じゃない。 俺は男を襟元を離すと、剣の柄を握り、洞窟へと駆けた。 「ちょっと待て!!」と、一人の男が俺の肩を掴み、地面に引きずり倒した。 「余計なことすんじゃねー!! お前らに合わせたら、また勇者様の気が変わるかもしれねーだろ!!」 「そうだそうだ!!クソガキはさっさと帰っておねんねしてろ!!」 「うるさい!!!」 俺は立ち上がると、再びつかみかかろうとする男の手首を強く振り払った。 「痛っ!!なんて力だ!!!」 男がひるんだ瞬間、俺は洞窟の入り口へと走った。 モモとシオンもそれに続く。 ルカ、ルカ、待ってろ、ルカ!!! 洞窟に一歩、踏み入れる。 外よりひんやりしていて、湿っている。 俺は、足音が響くのも気にせず、暗闇も気にせず、水たまりを蹴って必死に走った。 水しぶきが散る。が、気にならない。がむしゃらに前だけを見据え、駆ける。 この洞窟はどのくらいの長さなんだろう。 道幅は狭いが、思ったより天井は高い。 ルカはもう、ドラゴンの元に着いてしまっているのだろうか。 しばらく走り続けた、その時だった。 ――グオォォォォォォッォッ!!!!!! 地響きと共に、けたたましい「何か」の鳴き声が響いた。
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