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「これは……?!」
俺は思わず、足を止める。
地響きのせいで、岩盤の欠片が、カラカラと地面に落ちる。
「ドラゴンが、目覚めたのか?!」
シオンの声に、眉を上げる。
「この声……そう遠くないよな!!!」
俺は再び地面を蹴った。
走って、走って、走って。
大きな岩の横をすり抜け、つららみたいな鍾乳石を避け、なお進む。
道幅は徐々に大きくなってくる。
やがて、視界が開けた。体育館くらいの大きさのスペースにたどり着いたのだ。
暗闇に煌々と光るのは、松明の火。どうやら地面に置かれているようだ。
そして光はもう一つ。青白く光る刃。それは闇を割き、素早く動き回っている。
剣の刃に照らされているのは、オレンジ色の髪の小柄な少年。
……ルカだ。
「ルカ?!」
俺が叫んだ瞬間、青白い光の動きが止まった。
「……キョー?」
その声が小さく響いた瞬間、またもやグォォォーー!!!というバカでかい音。
そして、俺は、その姿を確かに捉えた。
ルカの前には、彼の身体何十倍もあるであろうドラゴンがいた。
それはトカゲとワニを足したようないで立ちで、四足歩行の生き物だった。
身体はうろこに覆われており、ウーパールーパーに似たチビリューとはまた違う風貌だった。
眼は緑。よだれを垂れながしている。
いつか見た、ウイルス感染した猿と、特徴が合致していた。
ドラゴンが、ルカめがけて尻尾を振る。
それをルカは、すごいジャンプ力で軽々とよけ、同時にドラゴンの背に向かって剣を振る。
が、キン!!という、弾くような鋭い音。
うろこが固いのか、ドラゴンはびくともしていない。
ルカは着地した瞬間、こちらに駆けよる。
「……キョー、どうしてここに」
「どうしてって、助けにきたんだよ。お前を」
「……助け、る?」
ルカが一瞬、目を丸くする。その時、ドラゴンの前足がこちらに向けて振り下ろされた。
油断していた俺は、一瞬固まる。
が、ルカはすぐさま前に出て、剣の刃でそれを受け止める。
そして払った直後に、足指と爪の間に向かって剣を突く。
ビリッという音と共に、小さな稲妻がドラゴンの指から腕に駆け上がる。
「グオワァァァァァ!!!!」
ドラゴンは苦しそうに、瞬間、前足を引っ込めた。
「ちょっとは効いたか?!」
ルカが叫ぶも、ドラゴンはすぐに体制を整え、ギロリとルカを睨む。
「ダメか……このくらいの電圧じゃ」
その呟きを聞き、俺はすぐさま耐電布をはがし、剣を抜く。
「俺も、戦う……」
「何言ってんだ、キョー!こいつすげぇ強いぞ?!」
「お前こそ、何言ってんだよ?!」
俺はルカの隣に並び、剣を構える。
「強いからこそ、一緒に戦うんだろ?それが友達だって、お前が言ってたんじゃないのか?」
俺が微笑むと、ルカは一瞬、息を飲んだ。
が、ドラゴンの鳴き声に、すぐさまそちらを向く。
ドラゴンは「グルルルルル」と、俺たちを見ながら威嚇したのち、グワッと口を開け、俺たちに突進してきた。
俺はすぐさま、横にジャンプし、避ける。
ルカは直後に、俺とは反対の方向にジャンプした。
「キョー、そのジャンプ力……?」
「サポーター、シスターにもらったんだ。
それに剣も。だから、足手まといにはならねーよ」
そう告げると、ルカは目を潤ませながら、コクリと頷く。
「……そっか」
と、その瞬間、今度はドラゴンが俺に狙いをさだめ、爪を振り下ろしてきた。
俺はルカに気がとられていたため、一瞬動きが鈍る。
「キョーくん!!!」
俺の手がグイと力強く引っ張られる。
「モモ!!!」
「モモ、お前まで来てくれたのか?!」
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