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シオンの呟きに、俺はふと、思いつく。 矢は、一度放たれたら軌道を変えることができない。だからはたき落とすことが簡単だ。 シオンは矢を地上から目に向かって打ち上げているため、ドラゴンの体制も変わらない。 じゃあ、もし俺が目を狙って飛び上がったならどうだ? ドラゴンの攻撃を避けながら、俺が奴の身体を駆け上がり、最後に高くジャンプして、落ちる勢いで目に切りかかればどうだろう? 複雑な動きでドラゴンの視線を撹乱させることができれば、瞳を貫けるかもしれない。 俺がドラゴンの背丈より大きく飛び跳ねれば、きっとドラゴンも身体を起こし、俺を見上げる。 そうすれば、お腹も自然と地面から持ち上がり、隙ができるんじゃないか? 危険だろうとは思った。 でも、俺がドラゴンの注意を引ければ、その隙に一斉攻撃ができるんじゃないか? 俺は皆に向かって大声で叫ぶ。 「俺が今から跳び上がって、ドラゴンの瞳を狙う!! その隙に、シオンとルカがヤツのお腹を、モモが足を狙ってくれ」 「お、おい、お前一人でか?!」 シオンが叫ぶのも気にせず、俺はドラゴンの目の前に走り寄る。 突然、視界の中心に現れた俺を、ドラゴンはグワーァっと大きな口を開け、威嚇した。 「おい、ドラゴン、お前の相手は俺だ。見てろ!!!」 俺はそう叫びながら、強く地面を蹴った。 空中での身体のコントロールは、裏庭での練習でずいぶん慣れた。 そのまま、最初にドラゴンの後ろ足ひざ元に着地する。 ドラゴンが、俺に向かって前足爪を伸ばす。 しかし俺はそれを屈んでかわす、と同時に、今度はその前足へと乗った。 「こっちだよ、ドラゴン!!」 俺が声を上げると、ドラゴンはブンッと俺を振り払うかのように、前足を激しく動かした。 その勢いで俺は、洞窟壁面に叩きつけられそうになる。 が、何とか宙返りをして体制を整え、壁に足裏を付ける。 そして膝を曲げ、壁を強く蹴ると、更にドラゴンの肩の辺りに飛び乗った。 「こっちだよ、ほら!」 「グルワァァァァ!!!!!」と、ドラゴンが凄まじい叫び声を上げる。 そのバカでかい声量で、俺の皮膚は震え、鼓膜がはちきれそうだ。 が、まだだ。もっと、俺自身にこいつの視線を引き付けなくちゃ。 いくぞ、と、俺は強く剣の柄を握る。 そして、つま先に力を入れると、ドラゴンの肩を足裏で思い切り押し、遥か上へと飛び上った。 ドラゴンは完全に俺に気を取られている。 後ろ足で身体を起こし、立ち上がるような体型を取った。 おのずと、お腹も持ち上がる。 「今だ、シオン、ルカ、モモ、同時に攻撃を」 そう俺が声を張った瞬間だった。 「グワワワワワァァァァァァァ!!!!!!!」
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